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ウラホロイチゲ - 浦幌一華

Anemone amurensis (Korsh.) Kom.

ウラホロイチゲ全体

北海道十勝地方の浦幌町にて国内分布が初認されたのでウラホロイチゲの名が

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Late April, 2014

ウラホロイチゲ生育環境

種小名 amurensis が示すように分布の本場は極東ロシア・中国東北部など

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Late April, 2014

ウラホロイチゲ蕾

蕾の頃の姿はちょっとエイリアン的かも…

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Mid April, 2014

ウラホロイチゲ全体

開花間もない頃はまだ葉が丸まっています

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Mid April, 2014

ウラホロイチゲ全体

茎葉のような苞葉と根際から出る根出葉があるのはイチリンソウ属の特徴

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Late April, 2014

ウラホロイチゲ葉

三出する苞葉はやや羽状に深裂し葉柄は広がり翼のようになります

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Mid April, 2014

ウラホロイチゲ葉

側小葉には2〜5mmの柄(小葉柄)があるとのことですが…

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Late April, 2014

ウラホロイチゲ花

花は径2〜3cmほどで (まるで花弁のような) 白い萼片は5〜8枚

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Late April, 2014

ウラホロイチゲ花

雌しべの柱頭はやや頭状であることは特徴の一つだが…見えづらいね

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Late April, 2014

ウラホロイチゲ全体

キクザキイチゲより全体が小型で繊細な印象があります

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Urahoro Town in Late April, 2014

浦幌一華 - ウラホロイチゲ

- キンポウゲ科 イチリンソウ属 -

環境省RL(2015) 絶滅危惧II類(VU)
北海道RDB(2001) 絶滅危急種(Vu)

標準和名としては、中井猛之進博士が1914 (大正3) 年に著した『朝鮮植物・上巻』に記述のある「やちいちげ」が正解なのかもしれませんが、ここでは北海道内の方々にはお馴染みであろうウラホロイチゲ Anemone amurensis の名を採用しました。これは、北海道十勝地方浦幌町での発見時にヤチイチゲではなくウラホロイチゲの和名が提唱されたこと、そしてやはり北海道の自生植物を観察するためのバイブルとも言える、梅沢俊さんの図鑑『新北海道の花』でウラホロイチゲが採用されていることも、北海道内でこの名が一般的になっている一因ではないかと。ただ、当の梅沢さんは1999年出版の著書『北の花つれづれに』の中で「“アムール地方のアネモネ”という意味の学名から、アムールイチゲと命名してほしかった」と、ウラホロイチゲという和名に対する違和感を行間ににじませており、同じく梅沢さんの2007年出版『改訂版 北海道 春の花 絵とき検索表』では主にアムールイチゲの名が使用されています。

それはさておき、スプリング・エフェメラルの一つであるウラホロイチゲですが、林縁など明るい場所で多く見られ、比較的新しい道路法面にも進出しており群生することもしばしば。外観は キクザキイチゲ A. pseudoaltaica とよく似ています。実際に自生地で対面してみると、確かにキクザキイチゲの各パーツを一回り小さくしたような印象ですが、根茎がより細いこと、側小葉に明らかな柄があること、(花弁のように見える) 白い萼片は短く5〜8枚と少ないこと、柱頭がやや頭状の独特な形状であること、染色体数が2n=48 (キクザキは2n=32) であることなどが特徴です。花を見ると エゾイチゲ A. soyensis にも似ていますが、ウラホロイチゲの方が概ね萼片数が多いことと、苞葉の形状が明らかに違うので、見紛うことはないでしょう。

主に極東ロシアや中国東北部などに分布し、日本国内には存在しないとされてきた Anemone amurensis が、上述の通り浦幌町にて確認され北海道の植物相に加わったのは1988年で、割に最近のこと。前後するように釧路地方にも分布する (その一部は植木や道路工事による土や芝生の移動に伴う移入とする見解もあり) ことが確認されました。のちに、1895年に浦幌川で採集されていた標本が発見されましたが、やはりキクザキイチゲとして整理されていたようです。ウラホロイチゲが北海道東部太平洋側で確認されたことにより、主に西部で見られるキクザキイチゲと生育地を分けることになり、両種が混生することはありませんが、全道的に分布する アズマイチゲ A. raddeana は、ウラホロイチゲと混生する姿が見られます。花期はアズマよりウラホロの方が若干早い印象を受けましたが、ほぼ同じと言える程度の違い。これらの交雑種はできないのだろうか?と思い調べましたが、そのような報告は見つかりませんでした。そもそもイチリンソウ属では交雑種の報告は少なく (ヒメイチゲ × キクザキイチゲくらい?)、交雑しづらい性質でもあるのでしょうか。

【 参考文献 】

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五十嵐博 (2014)「氷河期の生き残りの植物」モーリー 35, pp.16-19, 北海道新聞野生生物基金.

Kim, H. J., J. B. Jung, J. H. Sung, A. R. Han and P. S. Park. 2015. Flowering phenology and the growth of three native Anemone species in a montane deciduous forest on Mt. Joongwang, Korea. Horticulture, Environment, and Biotechnology 56(6): 849-857. doi:10.1007/s13580-015-1122-x

中井猛之進 (1914)『朝鮮植物 上巻』p.48, 成美堂書店. [ http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/951344/189 (国立国会図書館デジタルコレクション) ] (参照2017-04-15).

西川恒彦・中井秀樹・伊藤浩司 (1988)「北海道のウラホロイチゲ」植物研究雑誌 63(9), pp.322-327, ツムラ.

新庄久志・高嶋八千代 (1989)「釧路地方におけるAnemone属の一種について(予報)」釧路市立博物館紀要 14, pp.25-32, 釧路市立博物館.

新庄久志 (1990)「アネモネ・アムールエンシス」北方山草 9, pp.31-35, 北方山草会.

Sugimoto, M., T. Sato, Y. Iwatsubo and N. Naruhashi. 1998. A New Natural Hybrid of Anemone (Ranunculaceae) from Japan, Anemone × gokayamensis. The Journal of Phytogeography and Taxonomy 46(1): 103-107.

Tsukui, T. 1997. Plant Portrait and Plant Research in Anemone amurensis (Korshinsky) Komarov. Miyabea 3: 27-31.

梅沢俊 (1999)『北の花つれづれに』p.73, 共同文化社.

梅沢俊 (2005)「北海道・草花の風景6 ニリンソウの仲間」faura 6, pp.37-40, ナチュラリー.

梅沢俊 (2007)『改訂版 北海道 春の花 絵とき検索表II』pp.24-25, エコ・ネットワーク.

梅沢俊 (2012)『新 北海道の花』p.170, 北海道大学出版会.

Wang, W., S. N. Ziman and B. E. Dutton. 2001. Flora of China 6: 314, [ http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=200007427 ] (accessed April 15, 2017).

Ziman, S., C. S. Keener, Y. Kadota, E. Bulakh, O. Tsarenko and B. E. Dutton. 2004. A Taxonomic Revision of Anemone L. Subgenus Anemonanthea (DC.) Juz. sensu lato (Ranunculaceae) I. The Journal of Japanese Botany 79(1): 43-71.

Ziman, S., C. S. Keener, Y. Kadota, E. Bulakh, O. Tsarenko and B. E. Dutton. 2004. A Taxonomic Revision of Anemone L. Subgenus Anemonanthea (DC.) Juz. sensu lato (Ranunculaceae) III. The Journal of Japanese Botany 79(5): 281-310.

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