Last updated on May 11, 2016

エゾマツムシソウ - 蝦夷松虫草

Scabiosa jesoensis Nakai

エゾマツムシソウ全体

頭花の華やかさがとても際立つエゾマツムシソウ

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Mt. Apoidake in Mid August, 2012

エゾマツムシソウ全体

葉は菱形〜菱状卵形で羽状分裂し羽片は先がとがる線形

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Mt. Apoidake in Late August, 2009

エゾマツムシソウ花

周辺部の花から咲き始めます

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Mt. Apoidake in Late August, 2009

エゾマツムシソウ花

頭花は径4cmほどでたくさんの筒状花で構成されています

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Samani Town in Early October, 2014

エゾマツムシソウ花

中心部の花冠は筒状ですが周辺部の花冠は2唇形で上唇2裂&下唇3裂

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Mt. Apoidake in Late August, 2009

エゾマツムシソウ&ベニヒカゲ

ベニヒカゲが頻繁に訪花していました

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Mt. Apoidake in Late August, 2009

エゾマツムシソウ生育環境

山地では花茎がひょろっと伸びますが…

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Mt. Apoidake in Late August, 2009

エゾマツムシソウ生育環境

強風が吹き付ける海沿いではこんなにミニマム

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Erimo Town in Early September, 2012

エゾマツムシソウ生育環境

大きな個体は次々と花を咲かせます

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Mt. Apoidake in Late August, 2009

蝦夷松虫草 - エゾマツムシソウ

- スイカズラ科 マツムシソウ属 -

秋の気配が濃厚に漂い始める頃、藤色で大きく美しいエゾマツムシソウ Scabiosa jesoensis の花が咲き始めます。花が少なくなる時節、昆虫たちにとって重要な蜜源のようで、チョウやハチが訪花する姿をしばしば見かけます。北海道では渡島半島および太平洋沿岸に分布し、青森県の津軽半島でも見られるとか。

日本産マツムシソウ属の分類は長らく錯綜していて、エゾマツムシソウの分類も大陸のものと同種とされたり、マツムシソウ S. japonica に含まれたり、あるいは変種とされたり…と紆余曲折を繰り返してきましたが、現時点では独立種とする見解が支持されています。

マツムシソウとの違いを以下にまとめてみました。

<エゾマツムシソウ S. yezoensis
葉は菱形から菱状卵形。大きな個体は1植物体に多数の複合花序をつける。被萼は四角形で、縦溝がないか、あっても浅く広い。多回結実性多年生草本。
<マツムシソウ S. japonica
葉は卵形から倒卵形。大きな個体でも複合花序は概ね1つ。被萼は円筒形で、深く狭い8本の縦溝がある。1回結実性多年生草本。

葉の形状については、根出葉でより顕著だそうです。エゾマツムシソウは複合花序を持つ茎を多数つけるようですが、自生地ではそのような大きい個体はなかなか見かけない印象。

被萼とはマツムシソウ科に特有の形態で、種子と果皮を囲んでいる萼筒の、さらに外周を完全に取り囲んでいるもので、小苞が変化したものと考えられています。マツムシソウ科を分類する上で重要な形質だそうですが、今まで小総苞や小苞片など呼び名が一定していなかったので、被萼 (epicalyx) という名称が提唱されています。

最も大きな違いは「多回結実か1回結実か」ではないでしょうか。マツムシソウは生殖段階になるまで根出葉のみで数年を過ごし、やがて結実するとその個体は消失するようです。なお、エゾマツムシソウにはそのような特性は見つからなかったとのこと。

ちなみにマツムシソウは本州・四国・九州に分布するほか、北海道の渡島半島にも稀産するようです。

【 参考文献 】

Hinoma, A. 2001. FLORA OF HOKKAIDO - Distribution Maps of Vascular Plants in HOKKAIDO, JAPAN. [ http://www.hinoma.com/maps/plants/m9141.gif ] (accessed April 18, 2016).

清水建美編著 (2014)『増補改訂新版 高山に咲く花』門田裕一監修, pp.358-359, 山と渓谷社.

須山知香・植田邦彦 (2007)「新しい用語の提案ーマツムシソウ科果実における被萼ー」分類 7(2), pp.111-120, 日本植物分類学会. doi.org/10.18942/bunrui.KJ00004673022

Suyama, C. and K. Ueda. 2007. Taxonomic Revision of Scabiosa jezoensis (Dipsacaceae) in Japan. Kew Bulletin 62(1): 95-105.

梅沢俊 (2009)『新版北海道の高山植物』p.46, 北海道新聞社.

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